"読み"の効果と思考過程
当サイトは初心者から中級者までの方の"上達"が目的であるため、読みについてはあまり触れていない。 その理由は、繰り返しになるが、読みというのは基礎がしっかりとした上でやらないと、上達の妨げになりかねないからだ。 読みなど用いなくても五,六段には到達できるのだから、そこに到達していない人へ難解な解説をすることは害悪となる。 一方で、基礎がしっかりした上で読みの力を鍛えることには非常に意味がある。 最強クラスでは「読みの力でどこまで分かるのか」ということに興味があるかもしれない。 そこで、一つの例で"読み"の効果と過程を説明したい。
サイトの趣旨とは逸れるが、強くなればこんなことまでできるのか、とモチベーションを高めてもらえれば幸いである。読みが決め手になった実戦例
以下は管理人の実戦例である。
この局面で何を切るべきか考えてほしい。(明るい牌は手出し。暗い牌はツモ切り。上家は8ピンをポンして東切り、五萬をチーして二萬切り、打4ピンには切るまでに間があった。)

状況を整理すると、オーラストップ目で、ライバルの対面からリーチがかかっており、7400点差なのでツモられれば、1300−2600点以上で逆転される。
自分の手はバラバラで、攻め合うことはどう考えても不利である。
ではおとなしく現物から安全な順に切ってベタオリするか?ベタオリした場合、およそ4割程度逆転を許すことになりそうだ。
ここで、読みが生きてくる。
まず、自分とは約20000点離れており自分との順位争いでは一見関係ない上家と下家に注目してみる。
上家と下家の点差はわずか「1200点」であるが、2着目の対面とは10000点以上離れているためマンガンツモでも届かず、悠長にハネマンなど狙っていては千点や2千点でライバルにサクっと和了られてラスに落ちることになるので、両者とも2着目を狙わずにラス回避に走ることがほぼ確定している。マンガン以上が狙える手ですら点数を落として最速の1000点や2000点を和了りにくるだろう。この局の主役は熾烈なラス回避争いをしている上家と下家なのである。
ここまでは配牌の前に可能な読みとなる。
実戦の進行でも上家と下家が次々に仕掛けてラス回避に全力で向かっている。下家の目標は千点の和了、上家の第一目標は2000点の和了、次点が1000点のツモ・直撃狙いであろう。それ以上の点数になることはあるが、手牌のスピードに影響を与えないようなドラや赤が入っている場合に限られるので可能性はかなり低い。
これらの前提を踏まえて、改めて切るべき牌を考えてみると、自分がトップで終わるためのある方法が浮かび上がってくる。
その方法とは、「わざと放銃して和了ってもらうこと」だ。これを通称「サシコミ」という。
では誰にどのように和了ってもらうのか。局面を見てお分かりだと思うが、テンパイしている可能性が高いのは上家である。そして、ラス目のため、既に2フーロしてテンパイ間近の状態から対面のリーチに対してオリることもありえない。よって、サシコむターゲットは上家となる。
リーチがかかり上家は4ピンを"手出し"した。このような絶対に和了りたい局面では、関係ない牌や守備的な牌を持っていることは有り得ない。2フーロして捨て牌もそれなりに濃いので、くっつきを狙って浮牌として残した可能性もない。なんらかの手役を狙って残したことも考えにくい。
したがって、手出しの4ピンはほぼ手牌の関連牌である。
打2萬の時点で聴牌している可能性は50%くらいだろうが、その後ので和了っていないことから、これらの牌が待ちになっている可能性は低くなっている。
画像ではわからないが、上家が切るまでにかなりの"間"もあった。
次に、この"間"の理由を考えていく。
上家が仮に直前のツモでテンパイしたとして、待ちを選べない手であれば、4ピンを切るしか他に選択肢がないので、考える必要などない。そして、そのような場合に考えたフリをすることにメリットが考えづらい。
待ちが選べる場合はリーチへの通りやすさを考えていた可能性もあるが、まだ順目の浅いこの状況では、比べるまでもなく自分の和了確率を最大にする待ちを選ぶはずだ。よって、か
であればピンズの両面待ちにするだろう。
や
であれば、カンチャンかシャンポンを選べるので、迷った可能性はある。
待ちが選べる場合(考える可能性がある場合)の待ちはピンズの両面か、3ピン待ちのカンチャンか、2ピンと何かのシャボである。
ここで鳳凰卓という超上級者同士だから通用する読みを用いる。
ここまでに説明した読みというのは対戦している4人全員がわかっており、かつ、全員が分かっていることも全員の前提になっている。
つまり、私が差し込みのチャンスを伺っていることも当然知っているのである。
通常、このレベルの雀士が、相手に待ちを推理させるような間を空けたり手出しをすることはない。
それにもかかわらず、かなりの"間"を空けたのはなぜか。必ず理由がある。
ここにはこのようなメッセージが込められている。
"長考して手出ししました。この状況は全ツだって皆分かりきってますし、私達のレベルでは考える余地がないですよね?でも考えたということは?手出しですから明らかに関連パイですよね?これはメッセージ以外にありえませんね?だとすれば誰に対するどんなメッセージがありえるでしょうか?私の目的はこの手を和了りラスを回避をすることです。わたしに和了って欲しいあなたに向けて発信しています。お互いの利益を脅かす敵(対面)が迫っています。一刻の猶予もありません。待ちを知らせる以外にどんなメッセージの可能性がありますか?さあ共通の目的を達成しましょう"
ここまでの推理を踏まえて、切るべき牌を決める。対面のリーチも考慮に入れなければならない。
上家がピンズ待ちをアピールしている可能性が高いことは判った。待ちになっている可能性が高いのはと
であることもわかった。
この2つとも、見えているだけ数えてもワンチャンスで、さらに上家がをもう一枚持っている可能性が高いので、実質
0.5チャンスくらいの危険度である。従って安全度はかなり高い。
最後に、と
のどちらを切るかだが、上家の待ちの可能性が少しでも高いほうはどちらだろうか?
は2枚見えているのに対して、
はまだ見えていない。すなわち、
よりも
の待ちほうが上家の手で完成している可能性が高い。
結論は打3ピン。
結果はどうなったか。
サシコミが決まりトップを死守することができた。
結果成功したかどうかは可能性の問題であり、それよりも思考の過程が重要である。
似たような方法として、わざと赤ドラを切って差し込みやすい安い手であることをアピールする方法もある。
今回説明した読みは通常の麻雀のレベルからははるかにかけ離れていると思う。
しかし、現在最強の集団である鳳凰卓ではこれが標準的なレベルの読みなのだ。
このレベルの読みに興味のある方は鳳凰卓の観戦をしてみると良いだろう。
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